農業に魅力を感じ、農作業の経験はないけれども農業を始めてみたいという方が増えてきました。後継者不足に悩む農業関係者にとってはうれしいことですが、農業という仕事はそれほどたやすいものではありませんし、実際に就農するとなると、技術・資金・土地などはもちろん、熱意や忍耐心、協調性などさまざまなことが必要になってきます。ここでは、基盤となる農村での暮らしについて、事前に心得ておきたいことをご紹介しましょう。
(1) 農村の一員になる自覚
新たに農業を始めるということは、イコール田舎暮らしをすること、つまり、生産と生活の場が一体となった農村社会の一員になるということです。農村は、先祖代々その村で暮らしてきた方が大多数を占め、都会とは比べものにはならないほど強い絆で結ばれています。農村で新生活を始める際は、まず、自分が「村」という共同体の構成員になるのだという自覚を持つことが重要です。
(2) 相互扶助の精神
日本の農業は稲作を中心に発展してきたため、水田に必要な「水の利用」を軸にして集落が形成されてきました。大切な水を守ろうと、村人は水路の開発や補修工事などを共同で行いながら暮らしてきたのです。そうした相互扶助の精神は今も農村に息づいており、農村で暮らすならば、「道普請」と呼ばれる用水路の清掃や畦の草刈り、さらには冠婚葬祭、伝統行事、地域活動など、自分に直接関係のないことへの参加も当然のように求められます。住民との間に信頼関係を築くことが大変重要ですから、面倒がらず積極的に参加しましょう。南房総農業支援センターでは、新規就農者が地域に上手にとけ込むためのお手伝いをしています。
(3) 家族いっしょに
農作業や経営管理などはなかなか一人でできるものではありません。これから家族で農村に移り住み、農業で生計を立てていこうと考えているなら、家族で協力し、分担しあえる環境を作りあげていくことが大事です。労働面のみならず、精神面でも支え合える家族であること、わけても配偶者の理解と協力なくしては成り立ち得ないのが農業です。家族とじっくり話し合っていますか?配偶者は理解してくれていますか?事前の合意が、就農には欠かせません。